ただいまラボ
ジャケ買いです。
カバーデザインを手がける佐伯佳美さんという方の絵が好きで佐伯さんのカバーをみるとつい手に取ってしまいます。
佐伯佳美さんを知らない方でもこの表紙は興味を惹かれるのではないでしょうか。
動物がいっぱいの扉の物語は大学の獣医学部が舞台のオムニバスです。
といっても、犬や猫の患者さんを治療する僕たちが思い浮かべる“動物のお医者さん”の物語ではなく分子生物学研究室、通称ブンセイで学ぶ学生の物語です。
5つの短編で描かれるのは可愛らしい表紙とは打って変わって進み方を忘れて立ち止まる5人の大学生。
ー高校生のとき、ずっと飼っていた犬が死んだ。動物のお医者さんになりたいと思って獣医学科に入学した。(中略)しかし獣医学を学び、いろんな話を聞くうちに、その未来が曖昧になっていった。ー(シカミミ!)
知識や経験が増えるほどかえって自分が何がしたかったのか分からなくなってしまう。
そんな時、僕は何か指針が欲しくて自分の気持ちを決めつけようとしてしまったり誰かにもらった答えに安心感を得たくなってしまいます。
思っていたより単調、思っていたようなことは出来ない。そんな風に思って立ち止まっていると不意にものすごい力で自分のいる世界を見せつけられることがあります。
ー私たちが勉強不足だったせいで、あの犬は命を落としてしまったんだ。なんの力にもなれなかった。ー
ー固く目を閉じて横たわったビーグル犬の姿が、まぶたの裏でちらつく。あの光景はそうそう忘れられないだろう。ー
(ブンセイ!)
僕の単調だと思っていた、なんでもないと思っていた仕事はホンモノの命や誰かの生活に繋がっていたのだ…
その事に気付いた時の恐ろしさに追われて前に進んでいるような気がします。
格好良くてなんでもできる大人になりたいと24歳の今でもちょっと本気で思っていますが、ままならないものですね。